第6回 ブログ版 農業講座「キャベツ・ブロッコリーとレタスは同じ肥料で育ててええんやろうか? 後編」

ようやく暑さも少し和らぎ、猛暑の峠を越えた感じですね。

日中はまだまだ残暑を引きずっていますが、朝夕は窓を開けると「秋」の気配を感じさせるような風が入り込んできたりもしますよね。

家庭菜園や園芸を楽しまれている方たちも、外での作業が少し楽になったのではないでしょうか。

本日も、豊嶋和人さんによる「農業講座」始まります (^^♪

 

【キャベツ・ブロッコリーとレタスは同じ肥料で育ててええんやろうか? 後編】

前回からずいぶん間が空いてしましました。急いで肥料をふりましょう。秋冬野菜といえば、なんといっても香川県の特産品でもあるレタスとブロッコリー。それにキャベツやハクサイ、あとはホウレンソウもいいですね。

さて本題です。キャベツやブロッコリーとレタスの肥料について考えてみます。

前回(注1)、堆肥を選ぶ際には窒素の量と割合がだいじだという話をしましたけど、秋冬野菜の肥料を選ぶ際は窒素の形態がだいじになります。今回も窒素に絞ったお話をします。

(注1)第5回 ブログ版「農業講座」参照

 

肥料の三要素といえばなんでしょう。窒素、リン酸、カリ(カリウム)ですね。NPK.。そのうちリン酸とカリについはおおむねそのものリン酸とカリが水に溶けて根から吸収されます。窒素の場合も水に溶けて吸収されるのには違いないんですけど、窒素ってそれ自体はほとんど水に溶けないんですよね。空気中にいっぱいありますけどそのままでは利用できません。なので水に溶ける窒素成分の形で根から吸収されます。

根から吸われる窒素成分の代表は硝酸とアンモニアです。硝酸は畑作物、アンモニアは水稲によく利用されます…と土壌肥料の本には書かれているのですが、例外があります。畑作物なのにアンモニアが大好きなのはお茶のようなツバキ科の作物です。お茶の他にはブルーベリーもツバキ科ですね。

野菜はどうかというと、キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科野菜、トマトやナス、ピーマンなどのナス科野菜は硝酸が大好物です。じゃあレタスはといいますと、レタスは硝酸もアンモニアも同じくらい好む珍しい野菜なんです。ちなみにレタスはキク科です。

では硝酸大好物の野菜には硝酸入りの肥料を与えればいいかというと、話はそう単純ではありません。ここからが面白いところです。窒素を含む各成分は土の中で様々に変化します。

(図1)


ところで、前々回(注2)、石灰で酸度を調整する話をしましたけど、石灰で酸度を調整する目的は実はアルミニウム害を抑えたり、リン酸の効きをよくするだけではないんです。石灰で酸性を中和してpHを7前後の中性に近いところにしてあげると、この表にあるような微生物が活発に活動して窒素が吸収されやすい形態になりやすく、窒素肥料の効きがよくなります。よくお店で石灰質肥料のPOPに「肥料の効きがよくなります」と書いてありますが、それは窒素とリン酸の効きをよくするという意味なんですね。ただ、カリの効きはよくしません。むしろカリと石灰(カルシウム)は拮抗作用と言って、どちらかが多すぎるともう一方の吸収を阻害する関係にあります。

(注2)第4回 ブログ版 農業講座 参照

理屈が長くなってしまいました。今回も実際の肥料の生産業者保証票を見ながら説明します。まずはキャベツ・ブロッコリーなどアブラナ科野菜用にうちで使っている肥料です。

(写真① 本人撮影)

窒素が12%含まれていて、そのうち7.4%がアンモニアです。(上記 写真①)

窒素全量を保証する原料の欄には尿素しか書いていませんから、残りの4.6%は尿素に含まれる窒素分です。尿素はハンドクリームやその名の通り尿の成分としてお馴染みですが、土中では微生物によってすぐにアンモニアに分解されます。

好物の硝酸が含まれてないじゃないかと思いませんか。いいんです。さきほどの図1にあるように、アンモニアは微生物のはたらきで徐々に硝酸に変化します。植え付け時には根がそれほど発達していませんから、硝酸がいっぱいあっても吸えません。吸われない硝酸は草が吸うか、地下や空気中に逃げます。もったいないですね。

 

次はレタスに使っている肥料です。

(写真② 本人撮影)

原料を詳細に書いてくれています。(上記 写真②) ありがたいですね。硫酸アンモニアや尿素などの化学肥料と油かす、皮革工場から出た残りくずなどの有機質肥料を混合したもので、ここには書いていませんが、カタログには窒素の有機率が54%とありました。キャベツ・ブロッコリー用肥料のところでも書きましたが、アンモニアや尿素は徐々に硝酸に変化します。有機質肥料はゆっくりとアンモニアに分解されたあとに硝酸に変化します。レタスはアンモニアと硝酸が半々くらいでよく生育すると言われます。生育期間中、常にアンモニアも硝酸も吸収できるような有機質を多く含む肥料を選ぶのがレタス栽培のコツです。堆肥をたくさん施すと徐々にアンモニアが放出されますのでそれも効果的です。レタスの外葉は大きくなるんだけど小玉しかできない、あるいはふわふわの玉にしかならないという経験のある方は試してみてください。

 

(写真③ 本人撮影)

 

硝酸が最初から入っている肥料では、保証票に硝酸性窒素の割合を示す欄があります。(上記 写真③)

この肥料は原料を書いてくれていませんが、成分比率から推測するに、窒素22%のうち20%までが硝安、残り2%がアンモニアとリン酸が結合したリン酸アンモニウムでしょう。硝安は8月にレバノンの首都ベイルートの港で2000トン以上の硝安の大爆発があったように火薬の原料にも使われる物質です。なので欄外にあれこれと取扱いの注意書きがされています。

硝酸は植物がすぐ利用できる窒素分ですが、地下に流亡したり微生物によるガス化により空気中に逃げやすいという難点があります。じゃあいつ使うかというと、その難点を回避できる場合に使います。大雨が降らなくて、微生物がはたらかないのは寒い冬です。寒い冬にはアンモニアや硝酸を作り出す細菌もはたらきが鈍くなって、硝酸が土中に供給されにくくなりますから、そういう場合に追肥として使うとたいへん効果的です。余談ですが、水耕栽培や土を使わない培地の養液栽培では土壌微生物の助けがないため、最初から硝酸をたくさん含んだ養液を流します。

むりやりまとめますと、窒素肥料は作物と土壌微生物の都合に合わせて選びましょうというお話でした。

ブルーベリーはツバキ科で、レタスはキク科…。

園芸ど素人のワタクシにとっては、目からウロコのお話です (^^♪

豊嶋さん、今回もありがとうございました。

 

 

 

 

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第1回 ブログ版 星空講座「おうち天体観測」

今月から、ブログ版の教養講座に「星空講座」が加わることになりました (^_-)-☆

星や宇宙の不思議、天体観測のコツなど、星空に関する素敵なお話をしてくださるのは、香川県を中心に活動をされている、星のソムリエの松野俊博さんです。

テーマ【おうち天体観測】

 

みなさんこんにちは。「星のソムリエ」の松野といいます。

今日はまんのう町立図書館のブログにおじゃまして、「おうち天体観測」のお話をさせていただきます。

この数カ月、コロナ禍でたくさんのイベントがなくなり、天体観測会も中止が相次いでいます。

がっかりされている方も多いかもしれませんが、実は、おうちからでも星空は楽しむことができるんですよ。

「おうち天体観測」を楽しむのに、高価な望遠鏡や大げさな設備は必要ありません。

目の前に広がる夜空と、皆さんの想像力があれば、無限に楽しめます。

本日は、そんな楽しみ方のヒントをこっそりお教えしますね。

 

天体観測で一番初めに見てもらいたいのは、お月さまです。

毎日同じ時間に観測すると、少しずつ月が大きくなりながら、東へ移動していくのが分かります。

そして満月を迎えると、ウサギさんが餅つきをしている姿が見えますよ。

 

このウサギさんですが、国が違えば見え方も随分と違うようなんです。

例えば中国では「ガマガエル」に見えたり、ドイツでは「まきをかつぐ人」、アラビア圏では「ほえるライオン」に見えたりもするようです。

(出典:『調べる学習百科 月を知る!』吉川真/監修 三品隆司/構成・文 岩崎書店)

 

文化や宗教が違えば、連想するものも違ってくるんですね。

みなさんも満月をいろんな方向から眺めて、何が見えるか探してみてください。

ウサギさんがしているのは、お餅つきではないかもしれませんよ (^_-)-☆

 

次に、「じぶん星座」という天体観測遊びについてお話します。

「じぶん星座」とは、夜空に自分で思い思いの星座を作って楽しむ遊びのことです。

星座のことを何も知らなくても大丈夫。

星と星をつないで、自分だけの特別な星座を作っちゃいましょう!

ちなみに私は、まんのう町立図書館のマスコットキャラクターで「かりまいちゃん座」を作ってみました。

 

いかがでしょう。かりまいちゃんに見えますか?

みなさんも、夜空のキャンバスに自由に線を描いて、自分だけの星座を作ってみてください。

 

星は好きだけど、星の名前とかは知らないし…

大丈夫です。まずは自由に遊んでみればいいんです。

少なくとも私は星空は楽しむものだと考えていますよ。

 

今年の十五夜は、10月1日です。

 

十五夜の夜に月を見てみましょう!

お月見をしながらウサギかな?カニかな?ライオンかな?と考えてみてください。

(レオマワールドで撮影したスーパームーン:本人撮影)

松野さん、素敵なお話と写真、ありがとうございました。

皆さんも、おうち天体観測を楽しんでみてくださいね。

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見上げてごらん、夜空の先のその向こう☆彡

うだるような暑さも少し落ち着き、夜には虫の声も聞こえてくるようになりましたね。

いつもとは違う夏を、どのように過ごされましたか?

町立図書館でも、おはなし会や工作会など、子どもたちと一緒に楽しめるイベントを開催することが叶わず、利用者さんだけでなく、スタッフも残念な気持ちでいっぱいでした。

そんな中でも、町立図書館の夏休み企画の1つ、「かりまいちゃんぬりえ」には、たくさんのお子さんたちが参加してくれました。

おうちでキレイに塗ってくれた絵は、現在「おはなしの部屋」入口で展示していますので、ご来館の際は是非足を止めてご覧になってください。

子どもならではの色彩感覚や想像力が発揮された、素敵な作品がいっぱいです。

 

さて、夏の名残を惜しみつつ、町立図書館も秋の展示に模様替えをしましたよ (^_-)-☆

9月のテーマは「星と宇宙」です。

入口の特設コーナーでは、天体や宇宙の魅力を堪能できる本を展示しています。

おやおや? 何やら見慣れない方たちが写り込んでいますね…⁉

今回はなんと! ウルトラマンとのコラボ企画になっているんです!!!

昭和世代には懐かしい特撮ヒーローのウルトラマンは、M78星雲から地球を守るためにやってきた ”宇宙人” !

星や宇宙とは、切っても切れない関係にあるんですね (^^♪

 

館内中央には、「宇宙からの挑戦状」と題し、ウルトラマンフィギュアの展示と、ウルトラマンのお話に登場する様々な怪獣たちからのクイズをご用意していますので、ご来館の際はお楽しみください。

3分以内に、何問解けるかな?

クイズの答えはすべて、町立図書館の本の中にあります。是非チャレンジしてみてください ♪

展示している数えきれないほどのフィギュアのコレクションは、数百万光年離れたM78星雲からではなく、当館スタッフのおうちから、はるばるやって来てくれました。

地上に居られる時間も3分間ではなく、9月30日㈬までですので、じっくりゆっくり眺めて楽しんでください。

お月見にちなみ、「かぐやひめ」のコーナーも設置していますので、古典の魅力にも触れてみてください。

 (ミニ特設C)

これからの秋の夜長に、本を片手に天体観測…なんていうのもロマンチックで素敵ですね。

 

 

 

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電子図書館で名作コミック読み放題!!!

暑さの ”最上級” である「酷暑」が続いておりますが、皆さまお元気でしょうか?

あっという間の短い夏休みも終わり、子どもたちは暑さとコロナに加え、思い切り遊べない ”モヤモヤ” も抱えて大変だと思います。

そんな時は図書館へいらっしゃい! と言いたいのは山々ですが、まだ閲覧や学習は時間制限付きで、以前のように図書館での時間を満喫できる状況にはありません。

だからと言って、図書館が遠い存在になることはありませんよ!

おうちや学校・職場にいながら、町立図書館を利用できる方法があるんです (^_-)-☆

町立図書館の電子図書館なら、24時間365日、いつでもどこからでも、好きな時間に利用することが出来ます。

さらに嬉しいお知らせです!

現在、期間限定で「名作コミックのレジェンドタイトル読み放題」企画が開催されています。

 

設立から75周年を迎えた漫画出版の老舗である少年画報社が、昭和の時代を彩った名作コミックを、平成・令和に生きる子どもたちにも楽しんでもらおうと企画したものです。

一部例外を除いて漫画を所蔵していない町立図書館ですが、電子図書館でなら存分に楽しむことが出来ますよ ♪

期間は8月14㈮~9月30日㈬までの2ヶ月間です。

まずは、町立図書館のHPより「電子図書館」に ”入館” してください。

図書館利用カードの番号とパスワード(電話番号の下4桁)を入力し、サインインしてください。

電子図書館の詳しい使い方は、こちらをご覧ください。

『赤胴鈴之助』『思い出食堂』『ひとりごはん』『ねこぱんち』『少年画法大全』etc.…

お父さんお母さんの世代には懐かしく、お子さんやお孫さんの世代は新鮮な気持ちで楽しめる作品が200タイトル以上揃っています。

日本の「マンガ」がいかにして発展してきたか、歴史と伝統を感じさせる企画となっています。

お子さんたちだけでなく、昭和世代の大人の皆さんも、どうぞお楽しみください。

電子図書館では、様々なジャンルの本をご用意しています。

是非、おうち時間のお供に、楽しんでみてください。

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第5回 ブログ版 農業講座「キャベツ・ブロッコリーとレタスは同じ肥料で育ててええんやろうか? 前編」

例年にない長梅雨のあとは、世界中を干上がらせてしまうほどの猛暑…。

農業に従事していらっしゃる方たちだけでなく、趣味で園芸や家庭菜園を楽しまれている方たちも、ご苦労の多い夏となっていることと思います。

そんな皆さんにとって、今回もいいヒントになるようなお話が聞けそうですよ。

講師はお馴染み、農業の達人・豊嶋和人さんです (^_-)-☆

【キャベツ・ブロッコリーとレタスは同じ肥料で育ててええんやろうか? 前編】

 

長い梅雨が明けたら今度は連日の猛暑で人も野菜も大変ですね。うちはお天気はともかく、カメムシが多くて参りました。

そろそろ秋冬野菜の土づくりや施肥も考えていきたい時期ですね、前回(注1)は土づくりのはじめの一歩、石灰による酸度矯正のお話をものすごく脱線しながらしました。では続いて堆肥や肥料の話をしましょう。

(注1)第4回ブログ版 農業講座 参照

その前に「堆肥」と「肥料」の違いってなんでしょうね。この区別を説明するのはややこしくて、わかりやすく説明する自信がありません。さらに、法改正で来年あたりから「堆肥を混合した肥料」が出回りはじめる見込みです。なおさらややこしい。なんとなく堆肥には土のコンディションを整える資材(土づくり資材)、肥料には作物に養分を供給する資材、というイメージがあると思います。その例外が結構多いのでややこしいんですよね。では、よく使われる資材そのものの性質をクローズアップして見てみましょう。参考にするのは肥料袋に表示してある「生産資材保証票」です。これは肥料や堆肥の品質を確保するために法律で表示が義務付けられています。加工食品の食品表示と同じようなものですね。

一般に堆肥と呼ばれるものの中で代表的な2つを見てみましょう。まずは牛ふん堆肥です。(写真①)

(写真① 牛ふん堆肥  本人撮影)

 

いろいろだいじなことが書いてありますが、ここでは土の中でこの堆肥がどういう働きをするかに絞って説明してみたいと思います。そこで注目すべきは原料と窒素全量と炭素窒素比(C/N比)です。

原料は牛ふん、木くずとあります。木くずはおがくずと表記してあることも多いですね。牛のふんと木くずを混ぜて発酵させたものだとわかります。

窒素全量は0.8%です。1袋が16kgですから148gの窒素分が含まれていることになります。牛ふん堆肥は鶏ふん堆肥や豚ぷん堆肥よりも一般的に窒素分が少ないです。関連して炭素窒素比を見てみますと「23」とあります。これは炭素量を窒素量で割った値ですから、炭素が窒素の23倍含まれていることになります。牛ふん堆肥の炭素窒素比は10~20前後と言われています。これは多いほうですね。きっと木くずの割合を増やしているのだと思います。

 

次は鶏ふん堆肥です。(写真②)

(写真② 鶏ふん堆肥  本人撮影)

 

窒素全量が多いですね。3.87%もあります。鶏ふんの窒素が多い原因のひとつとして鳥なのでおしっことうんちが一緒に出てくることがあげられます。鶏ふんはふんを名乗りながらも、その窒素分の多くは尿に含まれる尿酸です(ちなみにわたしがこの春病院で計った尿酸値は8でした)。そして窒素が多いぶん、炭素窒素比も6.6と低いですね。

さきほど、「注目すべきは原料と窒素全量と炭素窒素比(C/N比)」と書きましたが、その中でも大事なのはあまり聞き慣れない炭素窒素比です。なんのためにこれをわざわざ計算して表示してあるかといいますと、有機物の分解のしやすさ/しにくさを示す重要な指標だからです。低い(窒素が多い)と有機物を分解する微生物がよくはたらいて、窒素と炭素が切り離され、肥料分となる窒素が出てきます。逆に高い(窒素が少ない)と分解されにくく、そのままの姿で土の中にいます。堆肥はよく土をフカフカにしてくれると言われますが、それはなるべくそのままの姿でいてくれてこその効果なので、炭素窒素比が低くすぐ分解される堆肥は肥料っぽい堆肥、炭素窒素比が高い堆肥は土づくりに役立つ堆肥となります。

前回(注2)、「イネ科植物のかたくて腐らない茎葉」が様々に利用されてきたことを書きましたけど、それはイネ科植物の茎葉のCN比が高いからなんですね。例えば麦わらの炭素窒素比は100以上あります。

(注2)第4回ブログ版 農業講座 参照

ただ、土のなかにそんなにCN比の高い有機物を混ぜておくとどうなるかというと、温度や水分など他の条件がそろっていれば、肥料や土のなかに残っている他の窒素分を使って微生物がその有機物を分解しようとします。植物が利用したい窒素まで微生物が先に利用してしまうので、植物は十分に葉を広げることができず困ってしまいますね。これを「窒素飢餓」といいます。

窒素の供給はおおむね肥料に任せて土のコンディションづくりに専念し、かといって、土中の窒素を微生物に奪われることもない堆肥が、いわゆる堆肥らしいよい堆肥といえそうです。その目安となる炭素窒素比が20前後です。さきほどの牛ふん堆肥は23でした。堆肥を選ぶ際には袋の表示のうちまず炭素窒素比をよく確認してください。

では炭素窒素比6.6の鶏ふん堆肥はどうなのでしょう。堆肥というより窒素の供給源、すなわち肥料のイメージで見たほうがよさそうです。園芸や家庭菜園の本に書いてある堆肥の投入量 (よく10aあたり2トンとか1平方メートルあたり2~3kgと書いてます) は、鶏ふんのような炭素窒素比の低い堆肥ではなく、牛ふんおがくず堆肥のような炭素窒素比20前後に調整された堆肥を想定しています。鶏ふんをそれくらいたくさん入れてしまうと野菜が軟弱に育ってしまい、病害虫が心配になります。

それでは鶏ふんを堆肥として扱うのは適当ではないかというと、他の炭素窒素比の高い有機物と土のなかで混ぜて炭素窒素比を上げてやれば、土のコンディション作りに役に立ちます。まんのう町でもブロッコリー屋さんやにんにく屋さんが夏に緑肥としてソルゴーを播いています。ソルゴーの炭素窒素比は40~50くらいですから、粉砕して200~500kgの鶏ふんと土の中で混ぜてやると、ちょうどよいCN比となります。

というわけで、今日はソルゴー跡に鶏ふん堆肥を散布しながらトラクターで混ぜ込みました。(写真③) この畑はキャベツ、カリフラワー、ハクサイなどのアブラナ科野菜を中心に植える予定にしています。ようやく野菜の品目名が出てきましたが、例によって長くなりましたので肥料のお話は後編に続きます。

(写真③ トラクターで堆肥を混ぜ込んだ畑 本人撮影)

ブログ担当のワタクシは、毎年夏になると、鉢植えのミニトマトを栽培し、ささやかな園芸気分を味わっているのですが、水やり以外には何もしない「放置栽培」(笑)なので、皮が硬くなったり、あまり大きくならなかったり、年によって出来にムラがあります。

お野菜も生きもの。

土づくりから肥料まで、ひと手間かけて育てることが大事なんですね。

豊嶋さん、今回もありがとうございました。

園芸や家庭菜園をお楽しみの皆さま、こまめな水分補給と休憩で熱中症などにお気をつけください。

では、また次回もお楽しみに。

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あなたと私の満濃池ものがたり

立秋も過ぎ、暦の上では「秋」とのことですが、秋の気配など微塵も感じられないほどの酷暑が続いていますね。

皆さま、体調を崩していませんか?

お日様が大好きなはずのヒマワリも、心なしか ”ぐったり” して見えるのは気のせいでしょうか (‘;’)

さてさて、今年は何もかもがいつもと違う夏になっています。

子どもたちの夏休みも驚くほど短くなり、旅行やお出かけも、まだまだ自粛ムードが漂っています。

そんな中でも、自然豊かなまんのう町には、3密を避け、子どもたちがのびのびと遊べる場所がたくさんありますよね。

国営讃岐まんのう公園やほたる見公園、大川山キャンプ場にかりんの丘公園etc.

豊かな緑と綺麗な空気。自然に触れる楽しさに目覚めた方も多いのではないでしょうか。

町が誇る、満濃池を訪れた方もいらっしゃるのでは?

そんな夏の思い出を言葉にしてみませんか?

現在、町立図書館では満濃池の魅力を再発見するイベントを開催しております。

その名も、『あなたと私の満濃池ものがたり』!!

ため池としては全国初となる「国の名勝」に指定された満濃池。

遠足や観光、史跡巡りなど、多くの方が池を訪れたことがあるかと思います。

そんな満濃池にまつわる「あなた」の思い出やエピソードを募集しています!

子どもの頃の懐かしい思い出や、日々の生活の中で根差した池への想いなどを言葉にしてみてください。

写真や挿絵を添えたもの、また想いを俳句などの歌に詠んだものでも大歓迎です。

応募用紙は館内カウンターに置いてありますので、どなたでもご応募いただけます。

 

7月20日から始まったイベントには、既に何人もの方が参加して下さっています。

 

素敵な挿絵を添えたものや、とても貴重な古い写真を持って来てくださった方もいます。

ご来館の際は、是非足を止めてご覧ください。

満濃池の魅力を「私たち」みんなで共有しましょう。

それが『あなたと私の満濃池ものがたり』です!

記入した応募用紙はカウンターまでお持ちください。FAXやメールでお送りいただくことも出来ます。

10月31日㈯まで受け付けています (^_-)-☆

 

皆さんのご応募、お待ちしています♪

 

 

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夏休み特別企画 始まりました☀

お日様に向かって一生懸命に背伸びをする無数の向日葵(ひまわり)。

まんのう町の夏の風物詩ですね。

こちらの写真は、当館スタッフが梅雨の合間に撮影した町内のひまわり畑です。

明けそうで明けない梅雨ですが、町立図書館では一足早く、夏の特別企画を開催しています!!

今年は何もかもがいつもと違う夏になります。旅行やお出かけも、例年通りにはいきませんよね。

お出掛けできないのなら、行った気になろう!  ということで、今年の夏のテーマは、

「旅した気分になれる本」です (^^♪

本の中でなら、誰もが自由に世界中を旅し、絶景やその土地ごとの名産品を味わうことが出来ますよね。

それでは、本の旅に出かけましょう!

まずは、「日本列島本の旅」。

館内中央には、巨大な日本列島が出現していますよ (^^♪

日本列島を8つの地域に分け、それぞれの素敵なところを紹介した本や、地域の魅力が再発見できる本を集めました。

  

ページをめくりながら、旅した気分を味わってください。

 

入口の特設コーナーでは、「異文化見聞録」と題し、外国の文化や風習などに触れられる本を集めています。

本でなら、世界一周も夢ではないですよね !(^^)!

 

館内3か所のミニ特設コーナーでは、旅にまつわるテーマで、様々な本を紹介しています。

    

B:絶景を楽しもう    C:旅ごはん        D:旅する物語

絶景や美味しいものを堪能したり、主人公と一緒に旅をしたり…。

本の世界では楽しさが無限に広がりますね ♪

 

まだまだお楽しみは続きますよ ☺

 

館内のいたるところに緑のテープが!?

ずーっと辿っていくと…、答えが見えてきますよ。

誰もが知っている有名な建物やモニュメントなどの、実物大の大きさを表しているんです。

思ったよりも、大きい?小さい?

是非、館内で「実物大」を体感してください。

 

こちらは、子どもたちに大人気の「すみっこぐらし」のコーナーです。

全国各地の名所や名産品とコラボした、「ご当地すみっこぐらし」がいっぱい!

当館スタッフの家から集めてきた ”すみっこ” たちと一緒に日本全国を回ってみませんか?

 

恒例のフォトスポットもありますよ (^_-)-☆

 

ロビーのガラス面に貼られた有名な観光スポットの数々。

どなたでもご自由に撮影できますので、是非 ”旅の記念”に楽しんでください。

 

その他、夏休みの宿題に役立つ本のコーナーや、「戦争と平和」、「課題図書」のコーナーも設置していますので、ご利用ください。

 

 

みんな大好き! 「かりまいちゃんぬりえ」もありますよ。

キレイに塗って、図書館まで持って来てくださいね。みなさんの作品を展示させていただきます ♬

 この夏のかりまいちゃんは浴衣姿ですよ ☀

 

参加型イベントでは、満濃池にまつわるエピソードを募集いたします。

題して、「あなたと私の満濃池ものがたり」!

昨年、ため池としては全国で初めて「国の名勝」に指定された満濃池。

地元の方たちにとっては、縁の深い場所ですよね。

とっておきの思い出エピソードをお寄せください。

応募用紙は、館内カウンターにあります。写真や挿絵を添えたものも大歓迎です。

もしくは、以下↓↓↓からダウンロードできます。

応募用紙(おとな用)

応募用紙(こども用)

応募いただいたエピソードは館内に展示し、多くの方たちと満濃池の魅力を共有したいと思っています。

詳しくは、図書館HPをご覧ください。

たくさんのご応募お待ちしています!

 

いよいよ、夏本番!

いつもとは違った夏を、本とともに楽しいものにしちゃいましょう!

皆さまのご来館をお待ちしています。

 

 

 

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「哲学」しませんか?

梅雨明け宣言がないまま、日差しは猛暑の様相を呈しておりますが、今年は何かと様式の違った夏を迎えることになりましたね。

子どもたちも、長くて厳しい夏のほとんどを、学校で過ごすことになりました。

子どもは子どもなりに、色々と思い悩み、それまではあまり考えることのなかった事柄について、思いを馳せることもあったと思います。

そこで町立図書館では、8月10(月・祝)と9月19日(土)の2回に渡って、「中高生のためのオンライン哲学対話」というイベントを開催することになりました。

まだまだ人が集まるイベントの開催は難しい状況にある中で、町立図書館としては初の試みとなるリモートでの参加型イベントです。

ビデオ会議システムZoomを利用し、提示されたテーマについて、参加者の皆さんが自分の考えを述べたり、お互いに質問しあったりしながら、対話を進めていきます。

哲学に関する特別な知識は必要ありません。率直な考えや思いを言葉にし、参加者がお互いの意見に耳を傾けたり、質問をし合ったりします。最後に何か答えを出すことが目的ではなく、対話を通して深く考え、探求することを大切にする会となっています。

進行役は、学びと対話の時間づくりの活動をされている「てつがく屋」の杉原あやのさんです。

対話のテーマは、

8月10日 「私たちに世界は変えられるのか?」

9月19日 「客観的って何だろう?」

両日とも、16:00~18:00で開催いたします。

定員は各日7名で、参加費は無料です。

中高生または通学・進学をしていない10代の方を対象としています。

インターネット環境が整った場所から参加して頂くことになります。

申し込みは「てつがく屋」HPのイベント申し込み欄からお願いします。

更に詳しい内容は、まんのう町立図書館HPのイベントのご案内をご覧ください。

 

対話を通して、深く考える――。

すでに「哲学」ですね (^^♪

ご参加お待ちしています。

 

 

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第4回 ブログ版 農業講座「紫陽花と宮沢賢治、あとバッタ」

今年の梅雨は、晴れの日が多いように思われましたが、ようやく梅雨らしいシトシト・ジメジメした天候になってきましたね。

夏至も過ぎ、梅雨が明ければ夏本番です。

暑さに日焼けにウイルスに…、人間だけでなく、植物だって生き物ですから気をつけることがいっぱいですよね。

そんな、この季節ならではの農業のおはなしを、まんのうの達人・豊嶋和人さんによる、ブログ版「農業講座」で学びましょう!

 

【紫陽花と宮沢賢治、あとバッタ】

アジサイの鮮やかな梅雨になりました。アジサイの花の色が赤くなったり青くなったりするのは、主に土壌pHが影響しているというのはアジサイを庭先に植えている方にはおなじみでしょうか。もうちょっとだけ理屈を付け加えると、土が酸性だと土壌中のアルミニウムが水に溶け出します。溶け出すということは根に吸われる状態になります。根から吸われたアルミニウムはアジサイの色素と結合し、青くなります。アルミニウムが溶けない弱酸性からアルカリ性では赤くなります。青いアジサイを来年は赤く咲かせようと思ったら、苦土石灰などで酸性を中和してやるとよさそうです。

(写真① アジサイの花、本人撮影)

 

アルミニウムには実は植物に対して毒性があります。ただ、その毒への耐性が植物によって違っていて、アジサイはアルミニウムに強いほうなので青くなるだけで済んでいるわけです。一方、アルミニウムに弱いホウレンソウをアルミニウムが溶け出す酸性条件で育てると、根が伸びずに下葉が赤くなって成長せず、農家の顔が青くなります。

以前にも少し紹介しました(注1)関東や九州に多いかつて痩せ地だった黒ボク土は実はアルミニウムを多く含む土なのです。どおりで作物ができなかったわけですね。その土は20世紀になって石灰やリン酸肥料の投入によって「ようでける」土になりました。石灰は酸性土壌を中和し、アルミニウムが溶け出さないようにします。リン酸はアルミニウムと結合して根から吸われない形にします。これは大事な肥料分のリン酸がアルミニウムと結合して吸われなくなるとも言えます。リン酸をたくさん施してはじめてリン酸が根に吸われるようになる土なんですね。

(注1)第1回ブログ版「農業講座」を参照

ちなみに、図書館にもたくさん蔵書がある、詩人で童話作家の宮沢賢治は、土壌肥料の専門家でもありました。農学校や羅須地人協会で土や肥料の教育に携わったことで知られています。晩年の賢治が熱心に取り組んだのが炭酸石灰肥料の売り込みでした。岩手に多く見られる黒ボク土はとにかく酸性土壌を改良しないとはじまらないわけですから。

黒ボク土ほどではなくても、わたしたちが耕す土も酸性改良したほうが作物がよくできる場合が多そうです。先に述べましたホウレンソウや、キャベツ、ブロッコリー、小松菜などのアブラナ科野菜はその代表です。では石灰をまきましょう。お店でよく見かけるのは消石灰か苦土石灰か有機石灰ですね。

消石灰は比較的水に溶け、酸性改良効果が高いですが、そのぶん土壌中で有機物やアンモニア肥料と反応しやすく、種まきや植付けの直前には使えません。苦土石灰や有機石灰は主成分が水に溶けにくい賢治も売込んだ炭酸石灰ですから反応も穏やかで、植付け直前でも施用できます。苦土石灰と有機石灰の違いはと言いますと、

1.苦土石灰は元々の原料が炭酸石灰と炭酸マグネシウムが主成分のドロマイトという鉱物で、有機石灰は牡蠣の殻です。それらを粉砕して肥料にしています。

2.苦土石灰は肥料分のマグネシウムを15%ほど含みますが、有機石灰にはその他のミネラルとともに微量含まれるのみです。

以前、20年以上毎年有機石灰を使ってブロッコリーを栽培していた畑の土壌分析をしましたところ、マグネシウムの数値が極端に低くて驚きました。ブロッコリーでマグネシウム欠乏症が大きな問題になることはほぼないのですが、作物によっては真ん中から下のほうの葉が葉脈に沿って黄色くなるなどの欠乏症状に注意が必要です。

ホームセンターの宣伝文句や肥料の本には有機石灰の特徴として「土をかたくしない」と書かれていることがあります。では他の石灰は土をかたくするかといえば、作付け前に堆肥などを十分に与えておけば気にすることはないと思います。有機石灰は元々が牡蠣殻なので小さな穴がたくさん空いていて、お店で他の石灰と肥料袋の大きさを比べてみればよくわかりますが、比重が軽いようです。そのぶんだけ土を軽くする作用はありそうですが、それに期待して入れすぎてしまうと、マグネシウム欠乏や過剰なアルカリ化を招くおそれがあります。化学肥料だけではなく、堆肥や土壌改良資材についても過ぎたるは及ばざるが如しということが言えます。

(写真② カヤで編んだバッタ、本人撮影)

ところで上の写真②は近所の石井さんからいただいた、カヤで編んだバッタです。生き生きとしていますね。その二週間後の様子が下の写真③です。乾燥しただけで形がそのままなのがすごい。違った味わいがあります。

(写真③ 乾燥したカヤのバッタ、本人撮影)

 

イネ科植物のかたくて腐らない茎葉は大昔から茅葺屋根やしめ縄などいろいろな生活の道具にも使われてきました。

ところが最近はカヤやススキの野原を見ることがあまりありません。代わりによく見るのは耕作放棄地のセイタカアワダチソウですね。でもこれからはひょっとすると昔ながらの野原が戻ってくるかもしれません。10年ほど前に借りた田んぼのお向かいに、田んぼを転用した資材置き場がありまして、セイタカアワダチソウがいっぱい生えてたんですよ。ところがここ1,2年でススキやチガヤに取って代わられるようになりました。田んぼの肥料、特にカルシウムやカリウムが抜けて酸性に傾くと、土壌中のアルミニウムが溶け出してセイタカアワダチソウは減り、元々日本の酸性土壌に生えていたアルミニウム耐性の強いススキやカヤが戻ってきたわけです。

(写真④ ススキとカヤの野原、本人撮影)

 

バッタ細工の名人石井さんに、「お前もそろそろこういうの作って教えられるようにならないかんのぞ」って言われてしまったのですが、手先が不器用なので自信がありません。どうせなら図書館でみんなで習いたいと思うのですが、いかがでしょうか。早くコロナの心配がいらなくなって催し物が再開できるといいですね。

 

では最後に図書館にある関連本を紹介します。

『宮沢賢治の元素図鑑(作品を彩る元素と鉱物)』桜井弘 著 化学同人 (4311 サ)

土壌肥料だけではなく鉱物マニアでもあった賢治の作品にはいろんな鉱物や元素が登場します。それらを作品にそって解説してくれる二度美味しい本です。

『いちばんよくわかる超図解土と肥料入門』 加藤哲郎 監修  家の光協会  (6135 イ)

本文中で三種類の石灰について説明しましたが、いろんな肥料や土づくり資材について大きな写真つきで性質や使い方を解説してくれます。最初の一冊に最適です。

 

カヤで編んだバッタの細工、素晴らしいですね。

豊嶋さんのおっしゃるとおり、早く催し物が再開できるようになって欲しいものです。

その時は、農業講座も ”生” で受講できますね♡

豊嶋さん、今回もありがとうございました。

カテゴリー: 未分類 | タグ: | 第4回 ブログ版 農業講座「紫陽花と宮沢賢治、あとバッタ」 はコメントを受け付けていません

第3回 ブログ版 郷土史講座「満濃池シリーズ2」

今年の「夏至」は、6月21日㈰でしたね。

二十四節季の一つで、北半球では一年で最も太陽の位置が高くなり、昼の時間が長い日です。

夏の中間であることから、「夏の頂点」と言われたりもするそうですが、確かに毎日暑いですよね。

マスクを着けたままでは一層暑さが堪えますが、体調管理に気をつけたいですね。

さて、大人気シリーズのブログ版「郷土史講座」も、いよいよ3回目に進みます。

講師は、お馴染みの片岡孝暢さんです。

 

第3回ブログ版 「郷土史講座」 ~ 満濃池シリ-ズ2 ~

 <「萬濃池 池宮」の絵図を見ての追究学習>

前回、「萬濃池 池宮」の絵図を見ての素朴な疑問や予想について、太郎くんと花子さんの対話、問答形式で記載しました。今回は、宿題にしていた神野神社のことや対話中の事項について、さらにお互いが勉強したやりとりを行います。(第2回も見てくださいね。)

 

太郎くん:宿題やってきた?

花子さん:図書館やインタ-ネットで調べたけど、神野神社の祭神の読み方が難しかったわ。でも、満濃池の堤に立って、絵図と景色を重ね合わせ、江戸時代に想いを馳せながら観てみると楽しかったわ!

太郎くん:僕は図書館から本を借りて調べたよ。

 

 神野神社について

花子さん:神野神社は延喜式内讃岐国二十四社の一つだそうだけど、どういう意味なの?

太郎くん:10世紀初め、朝廷から官社として認められた格式ある神社のことだよ。

花子さん:神様がたくさん祀られているけど、どのような由緒があるの?

太郎くん:罔象女命(みずはめのみこと)は美豆波能賣命とも書き、水の神だね。絵図の右手に見える九十九谷がある所の尾根筋先に天真名井(湧水)があり、そこに祀っていたみたいだね。それを、大宝年間(701~704)の池の築造のとき、堤の所に遷したようだよ。

花子さん:なるほどね。でも、その時そのあたりには、天照大御神の御子の稲穂神である天穂日命(あめのほひのみこと)を祀った神社がすでにあったの?

太郎くん:よくわからないけど、この2つの神と社が、弘仁年間(810~823)に、満濃池の築造とともに一緒になり、池の守護神(池の宮)になったみたいだね。

花子さん:そしたら、『新修満濃町誌』に書いてあったけど、大同3年(808)、矢原正久が満濃池地を流れていた金倉川の源流を鎮め治めるために、蛇谷の上の堂跡ケ峯(現在地から数百m東)に祀られた別雷神(わけいかづちのかみ)は、どうなったの?

太郎くん:嘉永5年(1628)、西嶋八兵衛が池の再築をするとき、池の宮の社殿を造営し、その際、別雷神も当社に遷し、三神・社が一つになったようだよ。

でも、天穂日命を祀った社はだれが、いつ頃、創祀したのか、つまり、神櫛王なのか、その子孫という矢原氏なのか、伊予から移住してきた御村別の子孫なのか、それとも氏人なのか疑問のままだよ。神話の世界の話であり伝承かもしれないけど、大和朝廷と何らかの関係があったと思うよ。

花子さん:ところで、池の宮が神野神社という言い方になったのはいつ頃?

太郎くん:明治維新のときの社名改でなったそうだよ。下の写真①が現在の神野神社だよ。

(写真① 神野神社 本人撮影)

(『香川県神社誌』『新修満濃町誌』『讃岐国名勝図会』『仲多度郡史』を参照)

 

◇ ウテメについて

太郎くん:余水吐(よすいばけ)のことで、岩床が手斧(ちょうな)で削ったように平坦にできており、お手斧岩(おちょうないわ)とも呼ばれているそうだよ。

花子さん:今は、余水吐はどこにあるの? かりん亭の真下に見えるコンクリ-トでできた溝のような所かな?

太郎くん:そうだよ。だから、内側が堤より少し低くなっているよね。明治39年の第一次嵩上げ工事に伴い、堤防の東端に移設されたそうだ。(写真②)放水工の水路床は花崗岩を露出した状態にあえてしているそうだよ。(写真③)

(写真② 現在の余水吐、本人撮影)

(写真③ 放水工、本人撮影)

花子さん:だから、満水の時は水が流れ、水しぶきがたち、まるで竜が暴れているように見えるのね。めったに見えないので、まるで幻の滝ね。

(『満濃池史』満濃池土地改良区、『満濃池名勝調査報告書』町教育委員会を参照)

 

◇ ゆる(揺、閘)について

太郎くん:江戸時代は、下の写真④(満濃池堤防断面図/閘の模型)のようになっていたみたいだね。大正時代までは木製だったので、腐りやすく、数十年ごとに取り替えしなければならず、莫大な費用と人手を必用としたようだよ。

(写真④ 満濃池堤防断面図/閘の模型(かりん会館展示物)、かりん会館提供)

 

花子さん:絵図に見えていたのは、その木製の竪樋(たてひ)の一番上の櫓(やぐら)かしら。かりん会館に、大正3(1914)赤レンガ配水塔の新設まで使用した「閘の敷板と筆木」が展示されていたわ。(写真⑤)

(写真⑤ 敷板と筆木、かりん会館提供)

太郎くん:このゆる(竪樋)は、水を上の櫓から順番に抜くようになっており、今の取水塔も同じで上から順番に抜いているんだよ。

花子さん:でも、どうして上から順番に抜くの?

太郎くん:それは、稲にとって良いあたたかい水をできるだけ田畑に送りたいし、しかも池の下(底)の方は泥水になっており管が詰まりやすいかもしれないしね。

花子さん:なるほど、工夫されているのね。それにしても、底樋は堤の下の方に作らないといけないから大変ね。

太郎くん:そうだね。そこで、嘉永2年(1849)那珂郡榎井村(現琴平町榎井)の庄屋であった長谷川喜平次が、負担軽減(民、百姓のことも考えて)のため、木の底樋を半永久的な石樋にすることを提案し、幕府の許可も得て工事が着工されたそうだ。そして彼自身、私財も投じたそうだよ。

花子さん:先見の明があって、素晴らしい方ね!

 

◇ 神野寺跡について

太郎くん:弘仁12年(821)、空海によって建立されたそうだよ。その後、寺は社と合わせて矢原氏の勧請を受けて繁栄していたそうだよ。

花子さん:そしたら、なぜ廃寺になったの?

太郎くん:天正12年(1584)、長宗我部軍に焼き払われ、荒廃したままだったようだね。

花子さん:でも、どうして焼き払われたの?

太郎くん:矢原氏の領地は、長宗我部元親にとって自分の四国戦略のための拠点である白地(阿波)と西長尾城をつなげるルートになっているから、どうしても確保しておきたかったと考えられるね。

花子さん:そしたら、現在地の神野寺になったのはいつ頃?

太郎くん:昭和8年に堂宇が建立され、昭和28年、取水塔の手前の森の所から本堂が現在地に移転したそうだよ。 (『同上町誌』、「金銅製灯籠笠銘」、聞き取りを参照)

花子さん:自分の近くの神社やお寺、池の揺などについても調べてみると、いろんな再発見があるかもしれないわね。

太郎くん:そうだね。次回は、満濃池の主な歴史年表を一緒に作ってみよう。

参考資料:

①『新修満濃町誌』満濃町誌編纂委員会 編 満濃町(2632マ)

②『満濃池史<満濃池土地改良区五十周年記念誌>』ワーク・アイ編 満濃池土地改良区(6146マ)

③『満濃池名勝調査報告書<まんのう町内名勝調査報告書第1集>』まんのう町教育委員会、生涯学習課、文化財室 著 まんのう町教育委員会(2918マ)

④『香川県神社誌』香川県神職会 編

⑤『讃岐国名勝圖會』梶原景紹 著 臨川書店

⑥『仲多度郡史』香川県仲多度郡 編 名著出版

※ 上記①~③の資料は、まんのう町立図書館に所蔵しております。

 

掘り下げれば掘り下げるほどに、新たな謎が出てくる…。

歴史研究は、浪漫にあふれていますね。

片岡さん、ありがとうございました。

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