第5回 ブログ版 郷土史講座「満濃池シリーズ4:紙芝居編」

今回の郷土史講座は、少し趣向を変えて「紙芝居」でお送りします。

満濃池の伝説が、講師の片岡さんによる味わい深い絵とともに、素敵な紙芝居になりました。

本邦初公開でございます。

どうぞお楽しみください。

 

第5回ブログ版 「郷土史講座」 ~満濃池シリ-ズ / 紙芝居編~

<満濃池の龍神伝説>

満濃池の龍神伝説は、『今昔物語集』の中の「龍王、天狗のために取られたる物語」に収められているお話です。(本文は讃岐弁です。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花梨さん:『今昔物語集』って、いつ頃、書かれたものなの?

太郎くん:平安時代の末期に書かれた説話集だよ。

花梨さん:この絵は現在の満濃池の堤から見た風景でしょ?

太郎くん:そうだよ。でもこれから物語は平安時代に入っていくので、絵もできるだけその時代に合わせて描かれているよ。

花梨さん:龍は満濃池のどこに住んでいたの?

太郎くん:絵の左の蛇谷と言われている所だよ。現在はここに「八大龍王」の祠が祀られているよ。

花梨さん:でも、なぜ満濃池に龍が住んでいたの?

太郎くん:地元の方の話によると、ここに棲む龍は志度寺から導かれて来たそうだ。志度寺の『當願暮當の縁起』に次のように記されている。その昔、當願と暮當という猟師をしている二人の兄弟がおり、兄の當願は三宝に帰することもなく、弟の暮當を妬んで、ある時首から下が蛇になってしまったそうだ。そこで、兄は弟に、「當国萬農の池にいれたまわれ」と願い、満濃池に入れてもらったという話だよ。でも、一説では、龍はもともと満濃池に棲んでいたと云われているよ。

花梨さん:そしたら、龍と蛇の関係はどうなっているの?

太郎くん:人々は、稲作の始まりとともに、蛇を生命・豊穣の象徴として畏敬の念を抱いてきた。そこへ、龍がインド(仏教)・中国(皇帝のシンボル)を経て日本へ入ってくると、蛇が龍へと神格化したのではないかな?そして、日本には「主・ぬし」という考え方があり、古来より山や川、池、渕、泉などには「ぬし」がおり、そこを守ってくれるという。

だから、雨の少ない讃岐、満濃池に龍が住んでいたということになったのではないかな。

天長元年(824)、空海が京都の神泉苑で行った「雨乞祈祷」の時も「善如(女)竜王」が出てくるよ。

花梨さん:ところで、絵の右手の九十九谷(つくもだに)の所にある井の印は何なの?

太郎くん:よく気づいたね。あれは、「天真名井(あまのまない)」と言って、出水(湧き水)があったそうだ。きっと、生活水や稲作に利用したのだろうね。

 

花梨さん:比良山のある琵琶湖は、当時何という国にあったの?

太郎くん:近江国(おうみのくに)といって、現在の滋賀県だよ。比良山はその琵琶湖の左(西側)にあるよ。

花梨さん:地図があると、讃岐国と近江国がどこにあるかよくわかるわね。どれくらい離れているのかしら?

太郎くん:地図帳で測ってみると、直線距離で約250kmだったよ。

太郎くん:そしたら、地図の中の緑の濃い所や黄土色の所はどんな所か分かる?

花梨さん:もちろんよ、学校で習ったわ。香川県の所が讃岐山脈で、四国地方の所が四国山地、中国地方の所が中国山地、紀伊半島の所が紀伊山地、そして黄土色の所が市街地よね。

 

花梨さん:御住職(ごじゅうしょく)はどこの寺のお坊さんなの?

太郎くん:比叡山延暦寺東塔の僧だよ。当時の高僧はみな比叡山延暦寺で修行していたらしいよ。もちろん、空海も高野山金剛峰寺を開く前は、ここで勉強したようだ。

花梨さん:龍神様は、お坊さんがつれて来られて、しかも水瓶を持っていたので、さぞかし嬉しかったでしょうね。

太郎くん:龍神様は「もし、一滴の水があるなら、あなたを必ずもとの住まいにお連れします」と言ったそうだ。そして、僧は喜んで水瓶を傾けて龍に水を与えたそうだ。

太郎くん:龍は喜んで僧にこう言ったそうだ。「けっしてこわがらずに目をつぶってわたしにおぶさってください。あなたのご恩は一生涯忘れません」と。

 

花梨さん:まさに、命の水ね!

太郎くん:生き物はすべて水がなかったら生きていけないものね。水の大切さを感じるね。

 

花梨さん:天狗は荒法師(乱暴な僧)の姿に化けていたのね。悪いことをしていたら必ずばち(罰)があたると、おばあちゃんが言っていたわ。

太郎くん:このあと、僧は龍の恩に報いようと、経を唱え、善根功徳(ぜんこんくどく)の行を修め続けたそうだ。

龍先生:まことに、龍は僧のおかげで命を全うし元の満濃池に帰ることができ、僧は龍の力により比叡山に帰ることができたのですね。めでたし、めでたし。日照りの多い水不足に悩まされてきた讃岐の農民は、龍が天高く舞い上がり(昇り竜)、雲を呼び起こし、雨をもたらす水乞い・雨乞い(竜神信仰)の象徴だったのでしょうね。伝説とはいえ、現代でも教えられることがたくさんありましたね。

 

※脚本はまんのう町の「かりん会館」に所蔵されていたものを使用させていただき、画は筆者が作成しました。

尚、『今昔物語集』は『新編日本古典文学全集35巻』「今昔物語集巻第14」、「竜王為天狗被取語第十一」馬淵和夫・国文麿・稲垣泰一校注者、小学館を参照させていただきました。)

こちらの紙芝居は、12月25日㈮~27日㈰の3日間、中讃ケーブルテレビの『まんのうまんテン通信』でもお楽しみ頂けます。

時間は各日、8時45分~18時45分~の2回です。

アナウンサーの中山百合子さんによる素晴らしい語りと、本講座の講師・片岡孝暢さんの解説で、より物語の世界観が広がって見えてくると思います。

お楽しみに♪

片岡さん、ありがとうございました。

 

 

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