第20回ブログ版農業講座「秋冬野菜の土づくりから種まき・病害虫・草について」

お盆が過ぎ、暦は徐々に秋へと近づきつつありますが、まだまだ猛暑の日も続いていますね。
夏野菜はそろそろ終盤、そろそろ秋冬野菜の準備に取り掛かる頃ではないでしょうか?

8月7日に秋冬野菜についての農業講座を行いました。
今日は、ブログ版農業講座とともに、当日の様子も併せてお伝えします。

講師はおなじみの豊嶋和人さんです。

今回から、コロナ禍以前の定員に戻して行い、たくさんの方にご参加いただきました。

質疑応答では、豊嶋さんの「どんな質問でもいいですよ」とのお言葉に、次々と質問を投げかける場面も見られました。

それではここからはブログ版農業講座をお届けします。

豊嶋さん、よろしくお願いします。

 

『令和五年度農業講座秋冬野菜の土づくりから種まき・
病害虫 草について』を開催しました。

 

それにしても暑いですねえ。と思えば大雨が降ったりして、ほんとうに昨今のお天気には悩まされます。

今回の農業講座ではセルトレイへの種まきの実演や、暖冬の野菜づくりのコツ、除草剤について、各種秋冬野菜のポイントなどをお話しましたが、ブログ版では暖冬と除草剤について取り上げたいと思います。

 

さて、繰り返しになりますが暑いですねえ。ところで今はエルニーニョ現象という気象現象が発生しています。気象統計を見るとエルニーニョ現象の発生時には日本の夏は冷夏になることが多いのですが、なんせ地球温暖化で気温が底上げされています。

エルニーニョ現象下の冬はどうかというと暖冬になることが多いのです。そして気温が底上げされていますから久しぶりの大暖冬になるかもしれません。そんな暖冬が野菜の生育にどんな影響を及ぼすでしょうか。

まずはいい点。野菜の成長が早くなって、キャベツや白菜はとても大きくなります。野菜の生育スピードを決めるのは生育期間中の気温の積算量です。よくスイートコーンや白菜などの種袋には◯◯日型と書かれていますが、これはあくまで目安なんです。例えば種袋に90日と書いてあるスイートコーンがあります。

4月に播くとこのとおり90日くらいで収穫になるのですが、これを暑い7月の梅雨明け後に播くと60日前後でできてしまうのです。お得かもしれませんが、たくさんの害虫や台風をクリアしないといけませんからなかなかたいへんです。

 

さて暖冬です。分かりやすく単純化しますが、平年の日平均気温が10℃の月があるとしまして、暖冬によってそれが2℃高くなるとしたらどうなるでしょうか。

この月の平年の積算気温は10℃×30日=300℃ です。

暖冬年ではこうなります。  12℃×30日=360℃ です。

その差は60℃です。平年に比べて10℃×6日ぶん、植物にとってはひと月が長くなり30日間で平年の36日分成長することになります。日銭商売で月末に原稿締切を抱えているわたしには大変うらやましい話です。

 

ただいいことばかりではありません。暖冬では土壌中の窒素がこれも温度で元気になる微生物の作用で植物に吸われやすくなります。他の養分は変わりません。そのために窒素ばかりが効きすぎて、野菜が軟弱になったり、カルシウムが欠乏したり、特にキャベツやブロッコリーなどのアブラナ科ですがホウ素欠乏の症状が出ることが多くなります。作付け前に苦土石灰などの石灰類を気持ち多めにまいておきましょう。そして元肥にはホウ素入りの肥料(野菜専用、葉物専用という名前で売られていることが多いです)を使用しましょう。

 

最後に最近なにかと話題の除草剤についてです。ホームセンターに行くと年々除草剤コーナーが大きくなっていますけれども、販売されている除草剤には大きく分けて二種類あります。それは農薬登録された除草剤と、農薬ではない除草剤です。農薬ではない除草剤にはラベルに「農薬ではありません」とか「非農耕地用」などと書かれています。

 

非農耕地用ならば庭では使えるのかと言われれば、使えません。ややこしいですけれども、人が管理している植物が生えている場所では使えないと覚えてください。駐車場や道路やグラウンドなどでは使えます。

 

農薬じゃないのなら安全なのかと聞かれれば、むしろ逆かもしれません。農薬として登録されるには様々な効果試験や安全試験をクリアしなければいけませんが、農薬ではない農薬にはそのような法規制がありません。とはいえ販売されている農薬ではない除草剤は主に特許の切れた農薬用成分を使っているようです。

 

どちらが効くかというと、一般論ではありますが同じ成分ならば農薬登録された除草剤のほうがよく効くと思います。効果試験をクリアし、プロの使用に耐えるものとして売られているわけですし、実際成分の効果を高める助剤(葉への付着を良くする界面活性剤など)がしっかりと配合されています。

 

 

今回たくさんの質問をいただきましたが、次回11月のお米の話の際にもたくさん質問をお受けしたいと思いますのでよろしくお願いします。では今回の参考文献です。

 

大西忠男,田中静幸『タマネギの作業便利帳』(6265 オ)

藤目幸擴『ブロッコリー・カリフラワーの作業便利帳』(6266 フ)

藤目幸擴『はじめてのイタリア野菜』(6260 フ)

農山漁村文化協会,藤目幸擴『おいしい彩り野菜のつくりかた』(6260 ノ)

西尾剛『マンガでわかる楽しい草取り』(6156 ニ)

伊藤操子『多年生雑草対策ハンドブック』(6156 イ)

日本植物防疫協会『農薬概説 2021』(6158 ニ)

 

 

豊嶋さん、ありがとうございました。

今回のブログ版農業講座の中で農薬や除草剤について触れていましたが、前回の「第18回 ブログ版農業講座 農薬のラベル・肥料の袋の見方について学びましょう 」ではより詳しく農薬について解説してくださっていますので、ぜひそちらもご参考になさってくださいね。

 

また、農業・園芸に関する質問がございましたら、図書館内の質問用紙、もしくはメールで受け付けておりますので、ぜひご活用くださいね。

 

 

さて、次回の農業講座は11月の予定です。

テーマは…秋の新米の時期にちなんで、「第2回 みんなでおこめについて考える会 作る人に聞いてみよう」を行います。

このテーマ、実は去年の同じ時期に第1回を開催しました。2回目の今回は、お米を食べる人から作る人へ色々なお話をお聞きできればと、前回同様座談会形式で行う予定です。

詳しい開催日時は後日、図書館内の掲示物やフェイスブック、告知放送などでお知らせします。

農業・園芸初心者さんはもちろん、ベテランのみなさんのご参加をお待ちしております。

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