すっかり春を通り越し、初夏の気配が近づいてきましたね。
暖かかった今年の春の恩恵を受けて、夏野菜がどんどん大きくなっている様子が、目にも楽しいこの頃です🥒🍅
さて、今年度最初の農業講座が、4月10日に行われました。
今日はブログ版農業講座を、当日の様子も併せてお伝えします。
講師はおなじみの豊嶋和人さんです。
当日は多くの方に参加していただきました。
作物の生育にも大きな影響がある農薬・肥料について、近年大規模な法改正が行われたということで、まだまだ知らない情報などもあり、皆さん真剣にお話を聞いておられました。
また質問も多く飛び交い、皆さんの関心の高さがうかがえました。
それではここからはブログ版農業講座をお届けします。
豊嶋さん、よろしくお願いします。
令和5年度農業講座
農薬のラベル・肥料の袋の見方について学びましょう
を開催しました。
スーパーに売っている野菜や果物にはその名称(キャベツ、りんごなど)と原産地(都道府県あるいは国名)が表示がされています。加工食品ではパッケージにわかりやすく枠でかこったなかに、原材料名(並べる順番にもルールがあります)や賞味期限(もしくは消費期限)、保存方法、などが記載されています。これらは食品表示法という法律で厳格にルールが定められています。消費者が自分の望むものを自由に選択するためのルールです。
同様に肥料や農薬の表示にもルールを定めた法律があります。農薬の場合は農薬取締法、肥料の場合は肥料法(肥料の品質の確保に関する法律)です。表示と中身が違っていた場合や不正確な表示を行った場合は罰せられます。大変厳しいものです。
まず肥料です。肥料袋はスペースがたくさんありますのでいろんなことが書かれていますけれども、法律で表示が定められているのは枠で囲まれたこういう部分です。
それぞれに成分量や原材料が記されていますね。堆肥のほうにだけは炭素 窒素比C/N6.6の表示が一番下にあります。これは堆肥の分解の早さを示す数字です。堆肥は土をやわらかくするなどと言いますが、同時に土壌中の微生物によって分解されると窒素分を放出します。この数字が小さいと分解が早い、すなわち土壌改良効果は長続きせず、その代わり植物が吸収できる窒素を早く放出してくれます。逆にこの数字が大きいと、土壌改良効果が長続きし、その代わりに植物が吸収する窒素はなかなかでてきません。鶏糞堆肥の炭素窒素比6というのはだいぶ小さいほうです。鶏糞は法律の分類上は堆肥ですが、肥料に近いものといえます。ホームセンターなどによく売っている牛糞堆肥やバーク堆肥は炭素窒素比15~25くらいです。こちらは土壌改良効果主体になります。
枠外にも使用量や使用方法などいろいろ書いてあることがありますが、講座でお見せした肥料袋の例のように、とてもざっくりとしていてあまり参考になりません。それぞれの作物の栽培指針や書籍などの情報を参照したほうがよいでしょう。
農薬のラベルにはほぼ法律で定められた事項しか書いていません。医薬品の説明書を連想してみてください。用法用量を守らないと、効果もそうですが副作用も心配になります。農薬も同様です。食用・飼料用作物に農薬を使用する際は、ラベルにある使用方法、倍率、使用回数を守ることが農林水産省の省令に定められています。
ところで適用病害虫名に載っているべと病やアブラムシなどの病害虫名は、厳密に言うとこれに効くよという意味ではありません。あくまでこの病害虫にこの殺菌(虫)剤が使用可能ですよという意味です。もちろん使用可能と認められるためには効果試験を経なければいけませんから、程度の差はあれど試験の際には効いたはずです。ところがその後、使っているうちに菌や虫が耐性をつけてしまうのです。あるいは古い薬剤では、昔の感覚では効いたものが、その後高性能な薬剤の登場で相対的に効果が低いとされるような場合もあります。
各都道府県には病害虫防除所という機関があります。
薬剤の効果や虫や菌の耐性を調べるのも防除所の重要なお仕事です。ただ、調べる対象が多すぎて1県の防除所ではなかなかすべては網羅できません。そこで全国各地の病害虫防除所のデータを参考にしてみましょう。その際インターネット検索にちょっとしたコツがあります。薬剤の菌や虫への効果のことを「感受性」といいます。アブラムシに効く殺虫剤を探すときは検索窓に
「アブラムシ」+「感受性」と入れてみましょう。体験談のたぐいより公的機関の感受性検定結果やそれに基づく論文がたくさん出てきます。手持ちの薬剤が効くかどうかを調べたいときは「薬剤の有効成分名」+「感受性」+「アブラムシ」と検索します。ポイントは薬剤の有効成分名というところです。検索の精度を上げるためには公的機関の試験結果や論文を探したいので、商品名ではなくラベルに書いてある有効成分名を入れましょう。
最近の農薬のラベルには、連用による耐性の発生を防ぐために系統の分類番号が記載されています。同じ番号の薬剤を連用すると耐性発生につながるおそれが大きくなりますので薬剤の効き目を守るためにもラベルをよく読んで使用しましょう。
…と、こういった話題を中心にお話しました。
今回、最後に草に困ってるから草のこともやってほしいとのご要望をいただきました。確かに草対策のご質問等はよくいただくのですが、わたしが虫とか病気よりもわりと草に対しては鷹揚なほうで、どんな条件でどんな草が生えるか、その草にはどんな虫がいるかなどを観察して面白がるほうなので(うっかり手遅れになって草に負けてしまうことももちろんあります…)テーマとしては取り上げてきませんでした。次回は心を鬼にして本気の草対策に時間を多く割きたいと思っています。
それでは当日ご紹介した図書館の資料です。
展着剤の基礎と応用 川島和夫 6158 カ
基準値のからくり 著:村上道夫 著:永井孝志 著:小野恭子 著:岸本充生 574 ム
今さら聞けない農薬の話きほんのき 農文協 編 6158 ノ
農薬概説 2021 日本植物防疫協会 編集 6158 ニ
土壌学の基礎 松中照夫 著 6135 マ
図解でわかる土壌・肥料の基本とつくり方・使い方 加藤哲郎 監修 6135 カ
土づくりと作物生産 日本土壌協会 編 6135 ニ
今さら聞けないタネと品種の話きほんのき 農文協 編 6152 ノ
タネ屋がこっそり教える野菜づくりの極意 市川啓一郎 著 6269 イ
ブログ版農業講座の中に登場した肥料袋のほかにも、参考資料として肥料袋をお持ちいただいておりました。
農薬・肥料と一口に言ってもたくさんの種類があり、また一つの農薬をとっても作物によっては使用量や使用方法が違うなど、聞いてみなければ分からないことがたくさんありました。
今回の講座の内容だけでなく、農業・園芸に関するご質問がありましたら、図書館に備え付けの質問用紙やメールでも質問を受け付けておりますので、ぜひご活用くださいね。
次回の農業講座のテーマは「秋冬野菜の土づくりから種まき・病害虫、草について」の予定です。
日時等決まりましたら図書館内の掲示物やホームページ、告知放送などでお知らせいたします。
皆さまのご参加、お待ちしております。