第16回 ブログ版農業講座「秋冬野菜の土づくり」

 

暑い日が続いていますね。

そんななか、コロナでずーっと中止になっていた対面での農業講座が8月1日に開催されました!予約も早々に埋まり、本当に待ちに待った講座を開くことができて、スタッフ一同ホッと一安心しています。

今回のブログは、その農業講座のフォローアップです。講座に参加された方もされなかった方も。秋冬野菜づくりに大切な土づくりについて、豊嶋和人さん、お願いします‼

暑いなかお集まりいただいたみなさん、ありがとうございました。暑いときは無理に外仕事をせずに涼しいところで本を読むのがいいですね。ちょっと内容を振り返ってみたいと思います。

そもそも土づくりとはなんでしょうか。土づくりの「土」はよい土のことなんでしょうけれども、ではよい土とはどんな土のことでしょう。

 

「よい土とは、作物の生育を阻害しない土である」(松中照夫『土は土である』p.13)

 

あたりまえといえばあたりまえなんですが、具体的に見てみますといろんな要素があります。

① 養分の過不足のない土(化学性がよい土)

② 硬くしまっていなくて、水はけがよく、適度に水もちがいい土(物理性がよい土)

③ 植物を病気にする微生物が少ない土(生物性がよい土)

 

養分の過不足はどうしてできてしまうのでしょうか。以前の肥料分がわりと残ってしまっている場合があります。土壌診断をすればはっきりわかるのですが、推定する方法もあります。前作の作物や草のほこり具合、緑肥を間に入れる場合は緑肥の出来具合を見てみましょう。生育後半まで青々としていれば肥料分が残っている可能性が高いです。あとは肥料分が雨で流されていないか。今年の梅雨は全般に空梅雨でしたね。例年より肥料分が残っていると推定できます。

土づくりに重要な堆肥で養分の過不足が起きてしまうことがあります。特に鶏糞は入れすぎに注意です。比較的効きやすい窒素、豊富なリン酸、あと肥料袋には保証成分として書いていませんが、採卵鶏の場合はカルシウムが10%程度含まれますから、そこにも注意です。逆に鶏糞を肥料として使う場合は窒素、リン酸、カルシウムは他のもので補う必要が少ないということになります。

「硬くしまっていなくて、水はけがよく、適度に水もちがいい土」

というのは言うが易しで、粒子が細かくて重いこのあたりの水田の土では難しいところがあります。積極的に堆肥を入れると理想には近づきますが、さきほどの要素の過剰が問題になります。樹皮を腐らせたバーク堆肥や、牛ふん堆肥でも養分の少ないものをたくさん入れましょう。

土の中に作物の病気の菌が多くなる典型例がいわゆる連作障害です。連作に弱いとされている作物は病気の菌を増やしやすいとも言えます。連作しないのが一番ですが、菌の性質を考えて土づくりをすることも大事です。作物を病気にするのは主に糸状菌(カビ)です。糸状菌は酸性を好みますので苦土石灰やカキ殻石灰で土壌の酸性を中和しておきましょう。有名なのはキャベツや白菜、ブロッコリーなどに大きな被害を及ぼす根こぶ病です。ここで重大な例外があります。じゃがいものそうか病です。この病気はアルカリを好む放線菌が引き起こす病気ですから、じゃがいもにはアルカリ性の石灰資材は不向きということになります。あとはいろんな微生物がたくさんいる土は病気の菌が増えにくくていいということが言われます。多様な微生物を増やすのも例によって堆肥のお仕事です。ただ、病気が出なくなるとまでは言えません。普段からの予防法のひとつでしょうか。

ところで今、かつてないほど肥料の価格が高くなっています。これは昨年からの傾向です。価格改定のたびに値上げとなって、多くの銘柄が一昨年あたりと比べて2倍前後の価格になってしまいました。ちょっとびっくりですね。

そんななかでも値段が上がっていないのが牛糞や鶏糞などの堆肥です。これらをたくさん入れて肥料分も期待しようというときに注意すべき点がいくつかあります。先ほどもでてきました過不足問題です。

牛糞の場合は肥料袋に書いてある窒素分が額面どおり出てきません。これはCN比(炭素窒素比)が高くて分解されにくいからです。なので硫安や尿素などの窒素肥料を補ってあげる必要があります。

鶏糞の場合は養分豊富でCN比も低く、化成肥料に近い肥料と言えます。ただ、窒素分が効きすぎると、あるいはたくさん含まれるカルシウムによってpHが上がると微量要素の吸収が抑えられて欠乏することがあります。特に秋冬野菜の主役となる大根やキャベツ、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜でホウ素の欠乏症に注意が必要です。ホウ素は一般にたくさん要らない養分ですが、アブラナ科は比較的ホウ素を必要とします。なければ茎が空洞になったり表面にかさぶたのような症状があらわれたり、日持ちが悪くなったりします。アブラナ科にはホウ素、これは覚えておいてください。

駆け足で振り返ってみましたが、まだまだ暑いようなので講座でも紹介しました図書館にある土づくりの本でじっくりと学んでみませんか。

今回の農業講座で以下の本を紹介しました(上から下にいくほど内容が詳しくなります)。

加藤哲郎『いちばんよくわかる超図解土と肥料入門』 6135 カ
藤原俊六郎『図解土壌の基礎知識』 6135 フ
村上圭一『鶏糞を使いこなす』 6134 ム
松中照夫『土は土である』  6135 マ
日本土壌協会編『土づくりと作物生産』 6135 ニ
猪股敏郎『図解でわかる 品目・栽培特性を活かす土壌と施肥』 6135 イ

 

農業は「科学」なんだ!と感じました。おいしい秋冬野菜、楽しみです。

また次回の農業講座をよろしくお願いします!

 

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