梅雨と言えば6月…と思い込んでいましたが、今年の梅雨入りは想定外に早かったですね。
農業をはじめ、天候に左右されるお仕事をされている方たちは、本当に大変だと思います。
ブログ担当のワタクシの心配事といえば、ちゃんと洗濯物が乾くかしら…、といったところですが(笑)
早い梅雨入りには、こちらの方も驚かれていますよ。
もうすっかりお馴染みになりましたね。農業講座講師の、豊嶋和人さんです。
今回は、農作物が天候から受ける影響についての「あれこれ」をお話しいただきます。
【雨と作物のお話】
まだ5月も半ばだというのに、梅雨入りしてしまいました。最近の気象統計を見てみますと、香川県の5月は高温旱魃(かんばつ)傾向だったのですが、ほんといったいどうなってるんでしょうねえ。
作物にとって水はなくてはならないものですが、ありすぎても困るものです。さしあたって、いつもと違う気候が今畑にある作物にどんな影響を及ぼすか考えてみます。
1.はだか麦、小麦
まんのう町の平野部は米麦二毛作地帯です。麦茶や味噌の原料となるはだか麦の「イチバンボシ」と、さぬきうどん用小麦「さぬきの夢2009」が作付けされています。麦は乾燥地帯の代表的作物ですから近年の高温旱魃傾向は麦にとっては大変有利な材料だったのですが、雨が多いとカビの病気や倒伏、穂のまま麦が発芽してしまう穂発芽が心配です。麦にとって早い梅雨はいいことがひとつもないと言っていいかもしれません。刈り遅れによるその後の稲作への影響も気になりますね。
2.にんにく、たまねぎ
にんにく、たまねぎの最後のひと押しの肥大には雨が欠かせません。その点では雨はありがたいのですが、病気を広げてしまう危険もあります。元々病気に弱いにんにくはもちろん、たまねぎも今年は暖冬でべと病の多い年のようですから、収穫まで油断ができません。
雨が多いと収穫時につく土や収穫物の水分が多くなります。そうすると、にんにく、たまねぎのような乾燥・貯蔵する作物は乾燥の仕上がりが難しく、すなわち腐りやすくなります。特により水分の多いたまねぎですね。病気が多い年だとなおさらです。軒下に吊るしたたまねぎは早めに食べてしまったほうがよさそうです。
3.葉物野菜
例年の高温乾燥状態ですと、この時期葉物野菜を悩ませるのが虫食いと、縁枯れや芯腐れのような生理障害です。虫は4月中旬までは例年より暖かかったこともあってコナガ、アオムシ、アブラムシなどよく見かけましたが、今はあんまり見ませんね。雨が多いと虫も普通に溺れたり、交尾・産卵ができなかったり、虫に寄生するカビ病にやられてしまったりしますから。
縁枯れ(チップバーンとも呼びます)や、芯腐れは主にカルシウムやホウ素といった、細胞壁を作るミネラルの不足によって起きます。畑にミネラルが豊富にあっても乾燥していればそういった症状が出ます。なぜでしょうか。
枯れたり腐ったりするのは芯や葉の縁、すなわちどんどん大きくなったり新しい葉が展開してくる先端部分です。そういった部分はホウ素やカルシウムをたくさん必要とするのですが、養分を吸う根から一番遠い部分でもあります。積極的に根が吸ってくれる環境でないと不足しがちになります。土壌の十分な水分と、葉の気孔がしっかり開くちょうどいいあんばいの湿度が必要です。そんな環境であれば根がミネラルを含んだ水をしっかり吸い、葉の気孔から水分を蒸散させる流れに乗せて先端に届けて、その不足を防ぐことができます。
というわけで適度な雨はありがたいのですが、度を過ぎるとやはり病気の発生が心配です。温度が高い時期に葉が濡れている時間が長くなればなるほど菌が侵入しやすく、病気のリスクが高くなります。キャベツやブロッコリーだと軟腐病や黒腐病、小松菜などの軟弱アブラナ科野菜だと白さび病ですね。
上の写真①は、少し縁枯れが出ていますが、その後の雨でとても大きくなりました。
4.夏野菜、お花
露地の夏野菜や農業講座でもやりましたキク、アスターは主に連休以降に定植してまだ実や花がつく前の段階だと思います。普段のこの時期の気候ですと乾燥して水やりが大変ですが、今年は十分な温度と水分を得てどんどん大きくなっているんじゃないかと思います。
ただ、あまりに長雨が続くようですと、当然日照不足で軟弱に育ってしまいます。長く畑に水が溜まるような状態では根も傷みます。そこから病気の菌が侵入するリスクも高まります。
そうなると困るのが一転して晴れたときです。根の発達も不十分、あるいは傷んでしまったところに高温乾燥の夏がやってきたら、根から水分が満足に吸えませんから軟弱徒長した地上部の葉はひからびてしまいます。日照不足ばかりは仕方がないですので、なるべく排水をよくして、そのうちやってくる暑い夏に備えて根を大事にしてやることが一番です。
ナスやピーマンなどでは下段の実をいつもより多めに落としてもいいでしょう。株の負担を減らすとともに、まずは実よりも根に光合成産物を回してあげましょう。
写真②は、うちの家庭菜園のナスですが日照不足でヒョロいですねえ。根傷みをふせぐために高畝にはしています。あと写真を撮る前にいらない道具は片付けたほうがいいですね。
旱魃に強い植物が旱魃に強い野菜とは限らないという話を予告でしていたのですが、旱魃がどっかにいっちゃいましたので雨のお話になりました。こう天候がおかしいと、天気に関する話は予告しないほうがいいですねえ。
図書館の本の紹介は、雨で心配になる作物の病気についてです。
最新にして正確、そしてコンパクトな病害虫図鑑です。西日本で育てられている主な作物や庭木を網羅しています。
なんの病気かわかったら効果的な対処法を学びましょう。こちらは主な病害虫の生態を詳しく知って効果的に防ぐためのビジュアル豊富な教科書です。
下の写真③は、先日畑で見つけたきのこです。レタスやキャベツ、ブロッコリーといった秋冬野菜に綿のようなカビがつく菌核病というやっかいな病気がありますね。実はその綿の元になる胞子を出すのがこのきのこ(子のう盤)です。
きのこのかさから飛んだ胞子が野菜に付着して菌糸を伸ばします。綿のように発達した菌糸はその後固まって黒豆のような菌核を作ります。この菌核は土の中で何年も生きますが、雨の多い20℃付近の温度のときに地表付近にあると、きのこを出して胞子を飛ばすんです。そんなことが学べるのが上記の本です。
見つけたきのこは胞子が出せないように埋めました。
われわれ素人は、キノコが生えているのを目にすると、つい「キノコだ!!」と言ってはしゃいでしまいますが、作物にとっては病気のもとになるイヤ~なやつだったんですね。
今回もためになるお話をありがとうございました。