郷土史講座「中寺廃寺跡~若き空海も修行した中寺廃寺を探る~」

8月24日(日)10:30~12:00
会議室にて郷土史講座「中寺廃寺跡~若き空海も修行した中寺廃寺を探る~」が開催されました!
大人気の講座、今回も あっというまに定員いっぱいになりました😲

 

さて今回のテーマは大川山の西尾根に位置する国史跡、中寺廃寺跡。
そこで、若き空海も修行したのではないか? という仮説を立てて考察していく講座です。

まずは、空海がどんな人物だったのかを伝える絵図を見ます。
空海の幼名は真魚。筋斗雲に乗って仏様と議論したり、友達と一緒に仏像を作って拝んだり、四天王がその身辺を守っているなど、幼少期から仏と共にあったことが描かれます。
そして幼い空海の伝説、そのクライマックスはやはり捨身行!
御年七つのその年に衆生の為に身を捨てて…法要などで唱えられる弘法大師和讃でもおなじみのエピソード。
捨身行は、山林修行の最終行だそう。空海は幼少期から山林修行に関心があったのかも…?

空海が大学を退学してから唐に渡るまでの約10年間は謎に包まれています。その期間に身を投じた山林修行の中で、中寺でも修行を行ったのではないか?というのです。

ところで、山林修行者って?
俗世の喧騒を厭って自らを社会から切り離した世捨て人…?
そうではないようです。
当時の僧侶に求められたのは、祈祷の力。そのための超能力「験」を高めるために山野に分け入って修行し、資源開発や医療、国境警備にも携わっていたそうです。中寺はエリート僧侶の育成のために、国衙がバックになって運営された山林寺院なんですって。山林修行は、僧侶としての栄達に不可欠なものだったんですね。
なんだか思ってたより組織立っていてかっこいいぞ…!

空海が修行を行ったと言われる四国の行場は、太龍山・室戸・石鎚。
それらの行場で、空海は数々の奇跡的な出来事に遭遇したり、魔物を退けたりします。
身をもって体験することが、「験」を高める上で重要なことなんだそうです。

ひとつの行場での修行を終えると、次の行場へと山林修行者は渡っていきます。それを辺路(へじ)修行といって、大辺路は四国全体の山林寺院を結んでいたそう。当時の中寺は有力な山林寺院。辺路修行の中で、空海が中寺で修業した可能性はあるんじゃないでしょうか。
ちなみに、この大辺路が後の四国遍路の原型なんだとか。

 

霊山の条件は、その見晴らしのよさ。
大川山は、丸亀平野を超え、遥か瀬戸内海の塩飽諸島さえ見晴るかす眺望を持ちます。
その大川山の西尾根、お話はいよいよ中寺廃寺跡へ!

古代国家の解体と共に後ろ盾を失った中寺は、中世には姿を消し、長らく地名や言い伝えに残るのみとなっていたそう。
それが見つかるなんてすごい!
人間の伝承の力! 探求心! ロマンに溢れていますね✨

現在では3つのゾーンに分けられていて、それぞれ建立時期が異なることが分かっています。

まずは、中寺で最初に現れたB地区から見ていきました。
古来からの山岳信仰と仏教が結びついた山林寺院の形態は特殊で、礎石の配置から複数の復元図が描かれたそう。B地区の建物跡は、最初は仏堂と予想されましたが、今では真ん中を通路が貫く割拝殿という建物であったことが分かっています。本殿と割拝殿の通路、その前の広場が大川山と一直線に結ばれるこの地区は、祈りゾーンとも呼ばれています。山岳信仰の寺院にぴったりな名前ですね。
この地区からは空海以前のものや、8世紀末のものが出土していて、B地区が8世紀末には出現していたことを裏付けます。
空海が山林修行に身を投じた時、既にB地区は存在していたのです。

中寺の各地区の建立時期を空海の動向と比較してみると、謎の10年とB地区の出現時期が重なり、空海が故郷に近い中寺で修業を開始したかも知れない…そんなストーリーが考えられると…先生は、ちょっぴり照れながら、空海を主人公にした筋書きを語ってくださいました。

中寺が廃れた後の大川信仰はどうなったのでしょう?
中寺が廃れても、霊山大川への信仰が失われたわけではありません。
金剛院を拠点とし、児島五流修験が大川信仰の新たな担い手となったのではないか? という説をお聞かせくださいました。
脈々と信仰が続いてゆく様に、ほっと安心しますね。
思わず山に手を合わせたくなります🏔

講座の最後は恒例の質問タイム!
みなさま、熱心に質問したり、自説をお話されたりと、熱意が溢れる時間となりました。

廃れてしまったのは寂しいけれど、だからこそタイムカプセルのように古代の姿を今に伝えてくれる中寺廃寺跡。ロマンいっぱいの時の旅を楽しむことができました。

 

今回の講義内容は、池内先生がご自身のブログで公開してくださっています!
とっても詳しくて勉強になりますよ😲
ぜひご覧ください!

https://tono202.livedoor.blog/archives/32811626.html
https://tono202.livedoor.blog/archives/32814618.html
https://tono202.livedoor.blog/archives/32826518.html
https://tono202.livedoor.blog/archives/32848689.html

 

次回の郷土史講座は、10月18日(土)
「増田穰三~まんのう町最初の国会議員は、電力・鉄道産業のパイオニアでもあった~」です!
詳しい内容につきましては、後日、館内掲示のほか、図書館ホームページやFacebook、告知放送などでもご案内いたしますので、こちらもぜひご参加ください!

カテゴリー: 講座 パーマリンク