日差しに輝く新緑が眩しい季節になりましたね。
初夏の兆しの中、土いじりをするのは気持ちがいいでしょうね。
本日は、土いじりが好きな方も、興味があるけどなかなかできずにいる方も、どなたでも楽しめ勉強になる、ブログ版「農業講座」の第2弾をお届けします。
講師は、‟まんのうの達人” 豊嶋和人さんです。
【コンパニオンプランツって、実際どれくらい「効く」んだろう】
最近ではスーパーやドラッグストア、ホームセンターの店頭で家庭菜園用に希釈済みのさまざまな農薬スプレーをたくさんみかけるようになりました。逆に多くの家庭菜園本は無農薬栽培を売りにしています。試しにまんのう町立図書館の蔵書から「家庭菜園」「無農薬」を両方キーワードに含む本を検索してみると、18冊も見つかりました。なるべく無農薬でやりたいけれども、現実は難しいということなんでしょうか。
無農薬でがんばる家庭菜園本によく登場するのが「コンパニオンプランツ」と呼ばれる技術です。作物の近くにその作物によい影響を及ぼす植物を植えて、生育を促したり、病害虫を防いだりするものです。
たくさんのコンパニオンプランツが紹介されているのですが、効果のほどはどうなんでしょう。これを実際に試して検証してみるのも家庭菜園の大きな醍醐味ですが、気候や作型、土壌条件に効果が左右されるようなものも多いような気がします。
例えば、レタスのようなキク科作物とキャベツやブロッコリーのようなアブラナ科作物を近くに植えて、アブラナ科作物だけにつくモンシロチョウやコナガを忌避させる方法がよく紹介されています。春はアブラナ科につくイモムシはほぼモンシロチョウとコナガだけですからバッチリですね。秋はどうでしょうか。秋だとコナガやモンシロチョウよりハスモンヨトウが一番の強敵イモムシです。そしてハスモンヨトウはレタスもキャベツもブロッコリーも食べてしまう広食性のイモムシです。秋にはどうやらこの方法は通用しなさそうです。
ところで、農家と研究機関の二人三脚によって、コンパニオンプランツの一種であるインセクタリープランツやバンカープランツを使って土着の天敵昆虫(益虫)を集めるプロ向けの技術がここ10年くらいでものすごく進歩しました。プロ向けということは、その技術で収益をより多く上げなければなりませんから、ちゃんと効果があって、費用や手間がそれに見合うものでなければなりません。そういったことが比較的確かめられた技術をいくつか紹介します。
まずは最近このあたりでもよくみかけるようになりました、ナスやキュウリやオクラの畑をイネ科の牧草「ソルゴー」で囲う技術です。これは元々岡山県で開発されました。「ナスのソルゴー巻」などとも言います。美味しそうですね。
ソルゴーは防風や、農薬の周囲への飛散を防ぐ役割だけではなく、蛾の飛来を妨げたり、様々な天敵の住処になります。特に、イネ科だけに寄生するアブラムシを食べにくる天敵をよく集めます。下の写真はソルゴーに寄生するヒエノアブラムシを捕食するヒラタアブの幼虫です。増えた天敵は野菜のアブラムシも食べてくれます。
ソルゴーは暑い時期の植物ですから夏から秋にかけて活躍します。うちは3月にオクラを播くのですが、風が強くアブラムシも多い春に同じようなことができないかと試行錯誤して最近うまくいってるのが、ライ麦を使った方法です。
極早生(右)と中晩生(左)の二種類のライ麦を12月に播いておくと、3月から5月にかけて立派な防風壁とアブラムシの天敵の住処ができます。
そんなに前から麦を準備するのはスペースの問題もあってたいへんかもしれません。そこで手軽に使えるのが、おうちで猫を飼っている人にはおなじみの、ホームセンターやペットショップに売っている猫草の種や苗です。これ、たいていは成長の早い極早生のえん麦なんです。苗で売っているものを買ってきてそのまま畑の野菜やプランターのそばに置いてもいいですし、3月から5月に種を筋播きにしてもいいでしょう。商品の性質上種子消毒していないので、すぐにムギクビレアブラムシというこれもイネ科にだけ寄生するアブラムシがついて、それを食べにテントウムシなどの天敵がやってきます。ただしえん麦は雑草化しやすいので、穂が出たらなるべく早く刈り取りましょう。敷きわらにすると2度美味しいですね。
このような麦を使ったアブラムシ防除法は、世界最先端オランダのパプリカ圃場でも行われているそうです。長くなりましたのでここまでにして、次回は果菜にキズをつけたりウイルス病を媒介するアザミウマやコナジラミを雑食のカメムシに食べてもらう方法を紹介します。
まさに、「生きた教科書」ですね。
豊嶋さん、ありがとうございました。
また次回をお楽しみに!